個人でアパレルブランドを起業する場合の戦略について解説
近年個人でアパレルブランドを立ち上げている方は増えています。しかし、個人ブランドの取るべき事業の「基本戦略」と、大手ブランドの取るべき「基本戦略」は 大きく異なります。
つまり、個人には個人の戦い方があり、基本戦略の策定を間違えてしまうと、思うように事業が成長出来なくなってしまいます。
ここでは、それぞれの違いについて解説し、個人でアパレルブランドを立ち上げたい場合に選択すべき事業の「基本戦略」について詳しく解説します。
個人アパレルブランドの起業戦略
■大手アパレルブランドの基本戦略
■個人アパレルブランドの基本戦略
■最後に
大手アパレルブランドの基本戦略
それではまず、大手のアパレルブランドの基本戦略について考えて行きましょう。大手のアパレルブランドの場合、以下のような経営環境が存在するため、自然と以下の様な基本戦略となります。
■大手ブランドの基本戦略
→売上目標が大きい
→必要在庫予算も大きくなり、大量生産により製品単価を下げる事が出来る
→売上予算が大きいので、それだけ沢山の人(マス)に広告を行わなければならない
(広告予算も大)
→沢山の人(マス)に買ってもらう為には、沢山の人にとって興味関心の高い商品
(トレンド商品)を作る必要がある
数億円、数十億円またはそれ以上の売上を獲得するには、当然ですがその分必要な在庫数・金額も大きくなります。そして在庫数・在庫金額が大きくなるという事は、一度に大量の発注を工場に依頼するので、製品単価をかなり下げる事が可能です。(逆に少ない発注数・発注金額の場合は製品単価は高くなります)
また、それだけ大きな売上を立てる為には、それだけ多くの人をターゲットとしてアプローチ(広告)を行わなければなりません。その為には多額の広告予算を組んで、ありとあらゆる広告手法を実施し、多くの人に商品やブランドの宣伝を行います。
上記図を見てみましょう。大手のアパレルブランドは、大きな売上を獲得する為に、ブランドの事業領域(セグメント)を広く展開します。例えば「ブランドA」の場合、30代女性でカジュアルファッション好きというセグメントで事業を展開しています。このセグメントには、おそらく数百万人位の人が存在すると思います。このように大きな売上を獲得しようとすると、必然的に大きな母集団(セグメント)を狙って様々なアイテム(洋服・バッグ・靴・小物など)を投入する必要があるのです。
さらに、より高い売上目標を達成するには、 それだけ沢山の人に商品を購入してもらう必要があり、その為には沢山の人にとって興味関心の高い商品を作らなければなりません。そうすると必然的に、その時々のトレンドを押さえた商品などを大量に作るという方針になるのです。
つまり、大手のアパレルブランドは、
「幅広いターゲット」に対して、「低価格」かつ 「高品質」なトレンド商品を提供する事が可能なのです。
弊社ではこれまで数多くのアパレルブランドの立ち上げ相談を受けてきましたが、 相場よりも低価格な商品や、その時々の トレンド商品を作りたいという方は非常に多いです。
しかし、上記で説明した通り、 低価格商品や トレンド商品は 大手ブランドの経営環境があってはじめて上手く行く戦い方となるので、個人の新規ブランドが大手と同じセグメント(事業領域)で戦う事は非常に厳しいと言わざるを得ません。
また大手ブランドと同じ事業領域内で同じような商品を販売しても、販売価格・製品品質・利便性・デザインのどれをとっても大手にはまず間違いなく勝てません。
よく、デザインで勝負できると考える人がいますが、大手の場合、専門のデザイナーが、圧倒的な情報量(将来のトレンド予測や、過去の売上情報)を基に「売れる商品」を生み出しています。つまり売れるか分からない商品ではなく、売れるであろう商品を日々生み出しているのです。
ここに、個人の感覚でなんとなく売れそうな(売れるか分からない)デザインの商品を市場に投入しても、ほとんどの場合そこにニーズは無く、厳しい戦いを強いられる結果となってしまうのです。(売れそうなデザインはほぼ確実に大手ブランドが先に展開している為)
それじゃあ、個人でアパレルブランドを立ち上げても勝ち目は無いじゃん!と思われるかもしれませんが、個人は個人の戦い方があります。それでは個人アパレルブランドの基本戦略を考えて行きましょう。
個人アパレルブランドの基本戦略
ここからは、個人のアパレルブランドの戦い方(基本戦略)について解説します。
個人でアパレルブランドを立ち上げた場合、資金面において大手とは圧倒的な差があるため、必然的に以下の様な戦い方となります。
■個人ブランドの基本戦略
→売上予算が小さい(数十万円~数百万円)
→必要在庫も少ないので、工場への発注ロットも少なくなり製品単価が高くなる
→広告予算も少ない為、狭い範囲の限られた人数しか広告出来ない
→ニッチ(隙間)な市場を見つけ、特定のターゲットに特化し、アイテムの絞り込みを行い「高価値」な商品を「中~高価格」で販売すべき
個人ブランドは、売上の規模が小さいので、必要となる在庫量も少なくなります。
そうすると、工場への発注ロット(数)の小さくなるので、1個あたりの製品単価は大手と比較して間違いなく高くなります。
また、月々の広告予算も少ない(数万円~数十万円)為、アプローチ出来る人数も限られてきます。
このように、資金力の乏しい個人アパレルブランドでは、様々な制限の下で事業を成長させなければなりません。そうすると、自然と戦うべき選択肢は絞られてくるのです。
それでは、個人のアパレルブランドの基本戦略は具体的にどうするべきなのでしょうか?上記図を例に詳しく説明します。
まず、例えば「30代のカジュアルファッション好き女性」な人達に向けたブランドを作りたいと考えた場合、
そのまま、ただの「30代のカジュアルファッション好き女性」に向けた商品を作っても、先に説明した「大手ブランドA」とがっつり競合してしまい、価格・デザイン・利便性・品質のどれをとっても勝ち目はありません。
しかし、上記図のように、「30代カジュアルファッション好き女性」の中でも、「ミニマリスト」志向の女性に特化した場合はどうでしょうか?
「大手ブランドA」の商品は「一般的な」「30代カジュアルファッション好き女性」をターゲットとして様々なアイテムを投入しています。それに対し、同じ「30代カジュアルファッション好き女性」でも、「ミニマリスト」志向の方は、カジュアル関連の商品に対するニーズは大きく異なります。
例えば財布を例に考えてみましょう。大手ブランドであれば、カードが沢山収納出来たり、小銭が沢山入るなどの使いやすく、ターゲット層の多くが気に入ってくれるであろう無難な商品を企画する傾向にあります。また、低価格路線のブランドであれば合成皮革等の素材を使用し、使いやすく便利で低価格な商品を投入するでしょう。
これに対し、「ミニマリスト志向」の方々は、長く使いたいというニーズや、収納力はそこまで高くなくて良いので、シンプルでコンパクトな財布が欲しいと思われる方が多いと思います。
であるならば、長く使える上質な本革を使用し、とにかくシンプルでコンパクトな財布を作り、さらには修理やメンテナンス等のアフターサービスを付ける事で「30代カジュアルファッション好きで、ミニマリスト志向な女性」のニーズを満たした「高い付加価値」の商品を提供する事が可能となります。さらに高い付加価値を提供する事が出来れば、値段が多少高くても許容される可能性は高まります。
また、このようにターゲットやアイテムを絞り込む事で、人数が絞られるので、少ない広告予算でも効率的に見込み客に対するアプローチが可能になります。
以上より、小規模個人ブランドは、ニッチな市場を見つけ、特定のターゲットに特化し、アイテムの絞り込みを行い「高価値」な商品を「中~高価格」で販売すべきなのです。
ただし、絞り込み過ぎてしまうと今度はほとんどニーズが無くなり、売れなくなってしまう可能性もあるので、事業領域の選択(セグメンテーション)には注意が必要です。
最後に
個人のアパレルブランドを立ち上げる場合の基本戦略について、大手ブランドのケースと比較して解説致しました。
昨今では、SNSの普及や、ECサイト等が簡単に作成出来るようになった事から、個人のアパレルブランドを立ち上げる方々が増えています。
ただし、ビジネスの世界は非常にシビアです。何の戦略も立てずに事業をスタートしてもその先に待ち受けているのは厳しい現実のみです。
個人でブランドを立ち上げ、成長させるには、自分の環境に合った戦略を立て、事業のフェーズ(段階)に即した戦術を実行する事が必須です。
「大手企業と個人起業」、「アパレル経験者と未経験者」、「事業の初期段階と成長段階」ではそれぞれ 戦い方が全く異なります。それぞれの戦い方を認識し、自分の取るべき戦い方を見極める事が出来れば、個人のアパレルブランドでも大きく事業を成長させる事が可能です。
したがってゼロから自分の個人ブランドを立ち上げたいと考えている方は事前にしっかりとした準備(マーケティング設計・戦略・戦術)の上、事業をスタートするようにしましょう!
特にマーケティング設計は非常に重要なので、事前にしっかりと準備しておく事をおススメします。
プロダクトブランドチャレンジ では、マーケティング設計からブランド立上げ、商品企画、webサイト・ECサイト作成、プロモーション、販売イベント、展示会出展など、ブランドの立ち上げ~成長(月商200万円程度)までのプロセスをオールインワンサポートしています。
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